ああ、この香り。
またこの香りの中に私はいる。
時空全てがこの香り。
一度この香りに吸われてしまったら、
もう二度と戻ることはできないのかも。
ああ、好きだ。
本当に好きだ。
吸い込まれていく。
このまま香りになって消えていきそう。
表現できない。
他に同じ香りがない。
発酵中の鉄観音の香り。
鉄観音がお茶に変身している夜の香り。
夕方から霧が流れてきて雨と共に急に冷え込み、
深夜までかかった揺青が少し前に終了。
夜明けに茶樹の上で堅くなっていた香りは、
昼にやわらかく膨らんでおかんたちの手で摘まれ、
そこから半日以上私に動かされて、
たくさんの新しい香りを生みだし、
ずっと一緒に過ごしてきて、
深夜になってやっと解放され、
山山が深く眠るこの時間に、
ひとりそっと、
大きく大きくお茶に変身しつつある。
ああ、素敵。
静寂の山の夜、
ひんやりと清潔な大気、
この夜を支配している香りの中にいる。
花のようで花でなく、
水果のようで水果でなく、
おいしそうなのに食べられない、
食べたことないのにとてもおいしいと分かる。
香りが動いている、
次々と移っていく。
香りが生きている、
溢れるように咲いていく。
ああ、なんて美しい時間なんだろう。
隊長は茶葉の声に耳を傾け、終了タイミングを読む。
一通り棚に茶葉を並べて掃除をし、この日の作業が終わり、小紅は下の製茶所へ帰った。大門を締めるのを確かめ、
隊長はまた茶葉のそばに戻った。
今終わったものを出し、
次のグループの揺青をスタート
隊長は、記録に集中しながら、助手の小紅に具体的に作業指示
小紅は、指示通りに隊長の手足となり作業進行する担当
真剣&集中!
籠を回しながら、茶葉のそばでノートに記録。
『揺青中の茶葉の声』を聞きながら、同時に次に揺青する『静置中の茶葉の声』を聞いている。どちらも今に至るまでの『声の変化』がどうだったかをノートで確認しながら、更に今の記録を追加。『茶葉の声』を聞きながらそれぞれの進行タイミングを決断していく隊長。
第二揺がスタートするまでの間、それぞれ、
小紅、下の製茶所へ行きご飯&お弁当を持ってくる&少し休憩、愛子と打合せなど。
愛子、進行中の茶葉の観察と記録、思考、進行中の茶葉に関連する茶葉を(今日は初日なので無いが通常は前日摘んで今日炒った茶葉も)審査しながら製茶記録等確認、気候を読む、思考しながら第二揺の計画、翌日の計画、文章整理、ご飯、品茶&打合せなどなど。
ふいみん、画像整理、ブログ作成、ご飯、品茶&打合せなど。
愛子の指示で、第二揺準備を始める