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幻の龍井茶(ロンジンチャ)

『幻の龍井茶』なんて勝手に呼んでいるけれど、この緑茶との出会いは本当に奇跡のような出来事でした。

同行した友人曰く、 「あまりの展開に、《超特大年末スペシャルドキュメンタリー》かなんかのテレビクルーになっちゃった気がして、思わず後ろ振り返ってテレビカメラ探しちゃったよ!」

時は2000年、茶摘みが本格的に始まる前の、早春の3人旅。

場所は龍井村の、とある大きな農家。


(この農家の人との、忘れられない出会いのドキュメンタリーストーリーはとりあえず省略するとして・・・)


気が付けば、私達が日本や中国の各地で手に入れた様々な茶葉と、 その農家や村、また近隣の村で作った茶葉を、龍井の井戸水と普通の水を使って比較しながら、 その後延々と続く事になる、お茶の勉強会(?)と試飲会、そして交流会が始まっていました。


途中、日本の茶摘みの歌を大声で歌い、茶摘みのまねをすれば、おばさん達もいつのまにか中国の茶摘みの道具を身に付けて、自分達の茶摘みの歌を畑で実演披露・・・日中茶摘みの歌合戦!


入れ替わり立ち代わりトイレに行きながら、あーだこーだと・・・

気づいたときにはすっかり日も暮れ、3人まとめて一晩お世話になりました。


朝が来て、畑を歩いて、またまたお茶の話に花が咲き、そして、いよいよ交渉です。

ここで作っている様々なランクの龍井茶をもう一度飲み比べ、どれもそれなりに特徴があり美味しいけれど、とてつもなく心に残るお茶のグラスがひとつありました。


それは、朝、私達に個人的に出してくれた商品にならない家庭用のお茶。

他のどんなお茶にも無い魅力があるのです。


グラスを口に近づけた時の、「えっ?」と言う感じのその香り。


口に含んだときの味の広がり。

ひとくち飲んだ後の、その余韻。

時間がたって尚、輝く色の美しさ。



首をかしげながら、うなづきながら、なんくちもなんくちも止まらない舌触り。


ごめんなさい。あの味を、うまく表現なんて出来ません。


茶葉は本当にくずなのに、やっぱり心に残るのです。



私達は、その家庭用のお茶が一番欲しいと言いました。


お家の人は随分困った顔をして、しばらく相談していたけれど意を決っしたように、突然消えたかと思うと奥から持ってきた小さな包み。


『幻の龍井茶』登場!


実は、家庭用のお茶も、もともとは『幻の龍井茶』。選り分けた後の落第茶だったのです。(『割れせんべい』とちょっと似ているかな?)


ということは・・・?


合格したそのお茶の味は?


ついに、その時がやってきました。ただし、3人で1つのグラスでしたが。

少し冷ましたお湯で、ゆっくり淹れてくれました。


ひとくち飲んでは、もうお互い顔を見つめることしか出来ませんでした。

もうひとくち飲んでは、3人とも自然とにっこり溜め息ばかり。


話を聞いてみれば、このお茶は国賓用に指定されていて毎年政府に収めている茶葉で、販売はしていないそうです、証明書らしき資料も見せてくれました。


年に数kgしか取れない、価格もない、貴重なその茶葉を最後に分けてくれました。


勿論、私達にとっては高い買い物でしたが、その時街中の茶屋で売っている新茶の『明前龍井茶』の半額で、しかも味は比較にならないので、とても幸せな買い物でした。


おまけに、

「このお茶を飲むのなら、こっちは買う必要無い。欲しかったら持っていっていいよ。」

と言って、特級よりランクの低いお茶は好きなだけ、家庭用のお茶は買い物袋パンパンに してひと袋持たせてくれました。

今も、お茶専用の冷蔵庫の中で、残りわずかな『幻の龍井茶』が眠っています。

   
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