①原料=100%天然種鉄観音、紅芽のみ、若樹のみ
鉄観音品種は1種ではありません。
このことは、産地の多くの鉄観音農家さんや鉄観音専門商人にも認識されて
いませんが、鉄観音も人工(改良)種と天然(在来)種があり、天然種の中でも
大きくはっきりと13種に分かれます。
その天然種の中で一番栄養価が高く内質が重く(=濃く)香気滋味ともに抜き
ん出て優れ多くの薬用効能も認められ、またもともと生存数が少なく希少性も
高いのが、通称「紅芽」。「天然紅芽」「天然紅芯鉄観音」とも呼ばれています。
しかし、「天然野生」の「紅芽」はここ数年で急激に存在が消えてしまった。
まだガスも水道もない山奥のおとんの家の近くでさえ、環境破壊が進んでいる
のがはっきりと目に見える。数年前、外地から来た茶園開発者等により山が
伐採された時に多くの野生茶樹も一緒に焼き払われ、おとんたち地元の人た
ちが昔から薬用として大切に分け合ってきた「天然野生紅芽」の老樹の多くも
焼かれてしまった。年に2日だけ山に入り薬用として製茶してきたおとんの「天
然野生紅芽」も、この時から製茶不可能となった。もともと中薬(漢方)としても
高値取引されていた「天然野生紅芽」の根は更に高騰し、焼け跡に生き残った
わずかな根さえも、中薬ハンターによって発見されると根こそぎ掘り出されてい
る。根がなくなった茶樹は2度ともとに戻る事はなく、種を増やすことも2度とで
きない。生き残った「天然野生紅芽」も、環境が変わればもう2度と同じ味には
戻らない。
03年秋、この「天然野生紅芽」を毎年作りたくて、一緒に飲んでくれる茶友を
探したくて、まずはこのお茶の存在を知ってもらいたくて、私は《品茶セット》の
おまけで茶友に差しあげた。
あの時のような「天然野生紅芽」の鉄観音は、もう2度と飲めない。
おとんの茶樹は、100%が「天然紅芽」。
おとんの畑には、それしかない。
ちなみに、この「天然紅芽」をメインに改良して品種固定したのが通称「人工
紅芽」。「人工紅芯鉄観音」や「紅芯鉄観音」とも呼ばれ、また天然種と同じ
ように「紅芽」と呼ばれることもあります。
おとんは毎年春の製茶が終わると山に入り、「紅芽」の天然野生樹「天然野
生紅芽」を探し、好い芽を選び必要な最少量だけ切り取って、そこから約2年
の歳月をかけて茶苗を育てる。
生長した中から好い茶苗だけ選び、同じく数年の歳月をかけて準備してきた
自然環境に近い高山の畑に茶樹としてデビューさせる。
これが「天然野生紅芽の2代目」で、「2代目」とおとんは(私も)呼んでいる。
この「2代目」を育てる事も、「天然野生紅芽」が少なくなってきた現在では
大変困難なことにになってきており、おとんの畑全体のほんの数%しかない。
多くは、「2代目」から増やした「3代目」や、「3代目」から増やした「4代目」など
になり、これでも貴重な「天然紅芽」だが、代が進むにつれ自然にその「血」は
薄くなり「天然野生紅芽」本来の鉄観音原味からは遠くなってしまうのは避け
られない。
収穫量に限界のある数%の「2代目」原料は、おとんは毎秋私のために全て
キープし、満意成功の仕上がりは全て山分けにしてくれている。おとんは
贈答用と家族用にし、私はサイトで
《品茶セット》として紹介し興味ある茶友に
はお分けしている。
現在、少なくなってきた野生茶樹(安渓地方だけで60種以上、そのうち鉄観
音種はほんの数パーセント)を野生の山に入って見つけ出し、その中から
確実に鉄観音種の中の「天然紅芽」品種だけを見分けられる作り手は、
ほとんど存在しない。
そのため、おとんは研究者たちからも大切にされている。
そうして畑デビューしたおとんの茶樹も、全てが立派に育つわけではない。
立派に育った茶樹でも、おとん満意の鉄観音の収穫はたったの数年。
茶樹は畑に植えられて3年め、3歳の年に平均して一番栄養価の高い旬を
迎え、4歳になると歴然と内質が薄くなり、その後次第に薄くなる。
土壌や茶樹によっては、2歳で旬を迎えたり珍しく4歳で旬がくること等も稀に
はあるが、平均すると鉄観音茶樹は3歳が一番の旬。
天然野生の原木に近い野味が強く出るのは平均して2歳のとき、茶樹として
成熟すると野味は薄くなる。
満意の鉄観音を作るには、原料とともに茶樹が育つ土壌が大きく関係する。
そのためおとんは、平均して7~8歳で伐採し、それまで茶樹に栄養を与え
育ててくれたその場所はすぐにまた畑にするのではなく、疲れているので
数年間は必ず山に返す。自然に返し自然の中で野生化させ復活させる。
数年間の畑の準備を含め最短でも6年以上の歳月をかけ、やっと茶摘みで
きるようになっても、おとん満意の仕上がりになる可能性はたったの3年前後。
おまけに、「天然紅芽」は一本の茶樹からの収穫量が極端に少ない。量産で
きるように改良した「人工紅芽」とは違う。
しかし、だからこそ、栄養価が高く香気滋味の濃い本来の原味を持つ鉄観音
茶葉の製茶が可能になる。
一般的な鉄観音農家さんでは、同じ畑を連続して使い10歳~30歳樹以上
でも収穫する。
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私が最初に飲んだおとんの茶葉は、「天然野生紅芽」の秋茶。
その香りと味わいのうまさはとにかく強烈な衝撃で体が熱くなった。
すぐにおとんに電話して「これ、なんていうお茶ー♪」と聞いた。
それまで日本でも安渓各地の製茶現場でも鉄観音は飲んでいた。
だが、おとんの茶葉を飲んでも全く気がつかなかった。
それまでの鉄観音とはかけ離れたまるで違う味だった。
おとんから『それは鉄観音というお茶だよ』と言われ、もう向かっていた。
祥華のバス駅から歩いて2時間半以上・・・人里離れた山奥。
おとんはそこで30年以上「鉄観音」だけを研究していた。