ん?今度はどこ?
また降りるの?
それで、また登る?
なに?2歳の樹があるところへ戻る?まだ見ていない場所がある?
まだあったの?!
小さーい。
これはそう?違う?
愛子、この辺の樹はみんな2歳なの?
え?違う?一部だけ?じゃ今愛子が触ってるものは?
これが?
2歳?わー!
かわいい♪
本当に小さいね、枝が少ない。
愛『ふいみん、この一本の樹から製茶できる原料の芽、何本摘めると思う?』
ふ「え?何本って?新しい枝の切口のところが摘んだところ?
えーーーと、1、2、3、、、。ってこれだけーー? 」
愛『樹にもよるけれどね。生長が早い株だったら7本位は摘めてるかな。
この場所は比較的生長が早いけれど、それでもその横のは1本だよね。
その横は3本は摘めたかな。』
ふ「えーー?1本の2歳樹から?これだけ?ひぇーー少なーい!」
愛『うん。でもね、3歳でもほとんど変わらないよ、少し多くなるくらい。
じゃ、一球で製茶するために、この2代2歳の樹は何本必要だと思う?』
ふ「え?うーーん想像つかない。すごくたくさんの樹がないとだめだろうね。」
愛『じゃ、一回7gとして、その一杯飲むために何本のこの樹が必要だと思う?』
ふ「えーと、、、、えーと、、。」
愛『自分が飲む7gに、何本入っているか数えたことある?』
ふ「ない、、。」
愛『ほら、昨夜おとんとやったでしょ。思い出してみて。』
ふ『数まで数えてなかった、、。』
愛『昨夜の手工は35本くらいだったかな。製茶の途中で自然に削れていくから
一杯分作るためにはきっと40本摘んでも足りないよね。』
ふ「うわ、、。」
愛『その一杯7gを飲むために、この2代2歳樹は何本必要だと思う?』
ふ「えーと、1、2、3、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、。
あそこからここからまでの全部。で一杯分だけーーー?」
愛『そう。それから、この2代2歳は今秋の一回だけ。来年には3歳になる。』
ふ「うん。」
愛『2歳と3歳では、香りも味わいも大きく変化するよね?4歳になればまた。』
ふ「うん。」
愛『2代2歳は一回のみ、その原料収穫チャンスまでに、何年かかると思う?』
ふ「畑の土壌作りに数年、、、苗で数年、、、畑にデビューして、、、ええー?」
愛『うん、長いよね。その年月、おとんはどのくらい手間かけて働いたと思う?』
ふ「想像できない、、、。」
愛『その全部が収穫できるとも、収穫できても好茶になるとも、限らないよね?』
ふ「うん、、、。」
愛『おとんの原料がどうして貴重になるのか、分かる?』
ふ「うん、、、ここまで少ないとは想像していなかった。」
愛『そうやって考えると、おとんの2代2歳とか2代3歳の原料を、伝統法で製茶
できて、それが気候にも恵まれて結果的に素晴らしい仕上がりになって、
それを飲めることって、ものすごいことだと私思うんだ♪』
ふ「うわーー、うんうん!!」
愛『この場所に、年に何度も収穫できる品種の鉄観音をぎゅうぎゅう植えて、
その同じ樹を何年も何十年も育てて株も大きく枝も多く密度濃く育てて、
となれば化学肥料使わないと無理だからバンバン使って栄養あげて、
そうなると虫は必ず大量発生するからドカドカ農薬使ってすぐに殺して、
早春茶も春茶も晩春茶も夏茶も暑茶も早秋茶も秋茶も晩秋茶も冬茶も、
摘んで摘んで摘んで・・・空調使って大量に製茶して出荷する。
そんな風に、おとんのこの場所の畑だってすれば、おとんはもっと楽して
たくさん収穫できるはずだよね?』
ふ「うん。そういうところはこれまで安渓内各地でたくさん見てきたし、、、。」
愛『おとんと私がどうして伝統茶にこだわるのか。どうして、伝統茶には
苗作りから原料選びから気候から製茶加工行程の細部からその仕上が
り品質から将来的な保存状況まで一貫してこだわるのか、分かる?』
ふ「うーん、、、。」
愛『あはは、ごめん!好きだからだよー♪飲みたいの!だから作る!
作るの大好き!楽しい!じゃなきゃここまでしないって!うししー♪』
ふ「・・・・・・。」
愛『ふいみん。今秋もすごいお茶仕上がったね。ああ嬉しいなー。
みんな飲んでくれるかなー。いっぱい飲んで、この子たち飲んでくれる
仲間いっぱい増やして、また来秋も再来年もおいしいの飲みたいねっ!』
ふ「うんっ!」
畑授業は続く、、、と最中に小絹の声が
『愛子ー、早くー、洗頭したいのーー、帰ろうよーーー!!』
はい??突然シャンプーですか、お嬢様。
お、私たちも帰らないと安渓へ着くのが遅くなってしまう。 [女尼]