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2007年03月28日
開いた芽
「おとぉ~ん、芽が開いちゃって大きくなってるのは、どうするぅ~?」
あいやぁ・・・。開いちゃってるぅ・・・。
『摘まなくて好い。大きすぎるのには構うな。捨て置けーーー!』
「も・もったいなぃ・・・。」
『それは間に合わなかったんだから仕方がない、そういう時はあきらめるんだ。
今の時期の碧螺春にそういう開いた芽を混ぜてはいけない。
見てみろ、摘み頃の好い芽が他にたくさん発芽している、それを摘むんだ。
これも今日摘み終わらないだろう、摘み残せばまたそうなってしまう芽が増えるだけだ。
わかったか?好い状態の芽からどんどん摘んでいくんだ。ほら加油ー!』
「はいっ!」
左:摘む 右:摘まない
左3芽:摘み頃=今日の標準:摘む
右3芽:開きすぎ=間に合わなかった:摘まない
実は、故意に右くらいの大きさになるまで摘まないで生長させている農家もある。
一家二家ではない。
最初は、きっと忙しくて茶摘が間に合わなかったのだろうと思っていた。
そんな芽を見ながらそんなことをつぶやいていたら、おとんが一言。
『そこはわざとだよ。』
「なんでえーーー?」
『そりゃーーー、これからの収穫量を多くするためさ。』
「ああ~ああ~。・・・なるほど。」
『もちろん、全家じゃないぞ。間に合わない樹はどこの家でもある。だがそこの家は違う。』
「うん。」
そういうことか。
右の状態で摘んだほうが、左の状態で摘むのと同じ作業量でより多くの産量を作れるからだ。
清明節前後の10日間くらいに仕上がった等級茶葉が、一番需要が多い。
製茶の時期だけでなく、夏になっても秋になっても、年間通して需要がある。
ちょうど今頃から、急激に需要が伸びるその期間に入っていく。
味わいも濃くなってきて飲み応えがあり、価格も出始めより手頃になっているので、
贈り物として使う用にも自分で飲む用にもまとまった量で購入する人が多い。
それより前の分前茶や出始めの明前茶は、貴重品で高価なので贈り物用にも自分用にするにも、
需要は限られる。
それより後の炒青は、ごくごく飲む地元の茶好きには重宝されるが、贈り物にするにはちょっと・・・。
作り手にとって、一番需要の多いその時期の産量が多いのは一番確実な収入となる。
一家の果樹園の広さや茶樹の本数は基本的に毎年変わらない。
変わらない条件内でその期間の産量を多くするためには、その期間の摘む重量を多くすればいい。
手っ取り早いのは、株を大きくする・芽の数を増やす・芽の大きさを大きくする。
同じ芽の数なら小さい芽より大きい芽の方が、同じ手間でも産量は増える。
芽は、摘まなければ数日で右のように大きくなり一摘みの重量が増える。
逆に、左の小さな芽の状態で日々摘んでいれば、需要の一番多い時期だからといっても
自然現象以外に極端に産量が多くなることはない。
芽の状態が大きかろうとその日の相場で取引される。
もちろん芽の大きさで価格の違いはあるが、大きくは変わらない。
需要少なめの頃に高価な茶葉を作って万が一手元に残ってしまうくらいなら、
客層広く売れるときまで摘まずに芽を大きくして大量に出荷したほうが確実だ。
おとんとおかんはそういうことはしない。というよりも、できない。
年齢を重ねた近隣の作り手さんの多くもまた同じ。
昔から作っている人にとってはすでに習慣になっているから、小さい芽が発芽すれば反応してしまう。
碧螺春というものはそういうものだというのが、小さな頃から体に染み込んでいるから。
収穫時期を逃した大きくなった芽を見ると、逆にプレッシャーを感じている。
腰が痛くても目がかすんでもどんなに疲労が溜まっていても、体が、手が、自然に反応する。
しかし、代が変われば考え方も変わるのも自然な流れ・・・。
撤収。時間的に限界。
気温が25度まで上がっている。生長が早い。
引き上げの時間も遅くなってきた。
それでも完全に摘み終わることはできない。
でも、いつまでも摘んでいるわけにもいかない。
すでに摘み終わった好い原料を活かすために、急いで次の工程に進まなければ碧螺春にはならない。
急げーーー。
村まで降りてきました。
あれ。。。ほうれん草がいっぱい混ざっている~!
『人の家のだ、取っちゃだめだぞ~。』
「はーい。」
村の中。。。てくてく。。。
ん~ん。あったか~い♪
ただいまー。玄関前の白果。芽がーーー♪
投稿者 愛子 : 2007年03月28日 13:45
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