2005年10月26日
特王
信じられないことが起こっている。
今、私の目の前で、信じられないことが進行している。
おとんとふたり、仕上がったばかりのひとつの鉄観音を品茶している。
1煎め、目を見張る。
2煎め、肝を抜かれる。
3煎め、奇跡が起こっていることを実感する。
4煎め、口数少なく静かに向かい始める。
5煎めあたりから、ふたりとも表情をなくした。
蓋裏を聞しては見開いた目が互いを覗き込み、
口に含んでは答えを求めるように互いの瞳を見詰め合っている。
7煎めあたりで、私は全身に鳥肌がたっていることにおとんに言われて気がついた。
10煎めあたりで、静かに腰をおろして一緒に行程を思い起こしてみる。
すでに12煎め。まだ終わりが見えない。
祥華のこの山で生まれ育ち、20年以上前、好い鉄観音を作るために
更に標高の高いひとつも人家のない好い水のある山の上に家を建てた。
水にこだわり、山頂の山泉水の源泉から何キロもの森林の中を、
家族で毎日穴を掘って何ヶ月もかけて水道管を地中に埋め、
少しずつ少しずつ繋げて家まで鉱泉水をひいた。
夏は冷たく冬は暖かく甘みのあるふっくらとした水が、
今も24時間いつでも溢れんばかりに流れ続けている。
育てる茶葉には自然環境を優先し、少しの汚染も許さず、
人家や道路に近いところには絶対に茶園を作らないことは今も変わらない。
自然生態を大切にするため、周りの環境をよく見て必要以上の畑は耕さない。
三十年以上、祥華高山で鉄観音のみを研究し作り続けている。
そのおとんが、人生で初めて出会ったという奇跡的なお茶が、
信じられないことに、05秋茶の最後の最後の日に出現した。
なにがどうしてこういうことになったのか、
考えられることはいくつもあるが、実際のことは
これからも研究してみないと分からない、とおとんは言う。
12煎め。
まだ色が、香りが、衰えを見せない。まだ水は重く、張りがとても強い。
いったいこの鉄観音はどこまで出るのだろう。
しかも、挑梗をしていない状態の7g。
茎がついたままの状態で、いまだに金黄色が衰えない。
冷ました12煎めの蓋裏から、まだ甘い香りが強く漂う。
おとんも私も、このお茶に名前の付けようがない。
この特出した特徴は、他に例えようがない。
『鉄観音の《王》の枠を完全に超えている、信じられない。』
『これは国への献上品だ。』 と、おとんは言う。
『どうしても呼び方をつけるなら。。。』
『《特王》。。。他に思いつかない。』 静かにおとんが言った。
《特王》の品茶はまだ続いている。
投稿者 : 2005年10月26日 09:00
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コメント
小[女尼]子!
>どうコメントしたらいいかわからなくて。。。
私もこのお茶をどうコメントしたらよいかわからなくなっている・・・いろんな意味で。
>とにかく、天・地・人に感謝!
まずはそれですねー♪
電話で直接話したから分かったと思うけど、おとんは相変わらずだよ。(笑笑)
yanggeたちと晩ご飯食べてからアモイにきました。
yanggeも相変わらずです。(笑笑)
後半の追い込みがんばるね、でも、ちょっとここで一度まとめて寝ておきたい。
アモイのお宿の難点だった水、好くなっているよー!
投稿者 愛里 : 2005年11月01日 02:36
どうコメントしたらいいかわからなくて。。。
愛里とおとんが品茶している姿が目の前に浮かぶよ。
とにかく、天・地・人に感謝!
まだ大変な作業があるようだけど、無事に帰ってくるのを待ってます。
投稿者 小[女尼]子 : 2005年10月31日 23:21
hideさん!
了解です♪
12月ですか! うわあ~~~いつかしら? 楽しみです♪
種類が多いので、ぜひ一種ずつガイド(笑笑)させていただきたいなぁ!
この鉄観音たちを無事に日本へ連れて帰るために、
いろんな方々に手伝っていただきながら、連日深夜遅くまで(今日はもう朝だ)
ここ安渓でパンかじりながら必死にがんばっています!
鉄観音をお好きな方と、ひとりでも多くの方々と、本当にこの感動を分かちあいたいです。
もうひとふんばりです、夜までにはアモイに移動します。
アモイでも、やることは多いのですが、
まずは安渓でやることに集中します。
あと一日ある。なんとかする。。。ふぁいとおーーーっ!!
投稿者 愛里 : 2005年10月31日 05:19
愛里さん!
今年はすごいお茶ができたのですね。楽しみにしています。
12月にも東京へ行く機会があると思います。できれば愛里さんと一緒に品茶してその感動を分かち合いたいですね。
お願いした進物用のお茶ですが、7g×3袋くらいがいいかと思っています。箱もあったほうがいいですが別にこだわりませんので適当によろしくお願いします。
投稿者 hide : 2005年10月29日 00:35
smashさん!
この気持ち、この感覚。。。
どんなシーンでも文章でそのままを表現することはとても難しいですね。
《特王》品茶の途中から録音し、でも、とても長い時間。
品茶後半、その場で一部ピックアップした文章を先に少し書いて、
そしてアップしました。
誰かに伝えたかった。あの時出ていた鳥肌の感覚。
感じ取ってくださってすごく嬉しい。多謝!!
このお茶が出来上がる直前にもコメントくださったから、
smashさんのパワーも入っているようなすごく不思議な感じです♪
早朝からありがとうございました。
絶対に絶対に一緒に品茶したい。
今も、このお茶飲んでいます。
なんか、涙がでてきた。。。あら、いやだ。
ほんとになに泣いているんだろう。。。へへ。
このお茶があるのに、「この感覚」を分かち合う相手がいないからかな。
毎日一緒に飲んでは一緒に感覚を表現しあい、時に飛び上がって手をたたき合い、
そして見詰め合っていた静かな感動の瞳、そのおとんの声も今は聞こえないからかな。
今も飲んでいるこのお茶のすごさと、そのお茶を作ったおとんの家への
ホームシックが混ざって、感極まっているのかも。。。はは。
あぁ。。。もう、いやだぁ~~~。
書いたらもっと涙が出てきちゃった。。。へへへ。
大丈夫、すぐ近くに老四(おとんの四男)がいます。
これからまたそこへ戻ります。
安渓滞在中でも、おとんに会いたくなったら戻ればいいし~♪
でも、やること先にやってしまいたいっ!
そう、おとんと別れ、安渓まで降りてきました。
kyokoさん!(←私もちょっと変な感じ~。)
(彼女は留学時代からの友人です♪)
11月5日に帰国する「予定」でーす。
ここからは、製茶とは違う意味で忙しくなります。
《特王》を含め、キープしたいくつもの《王》を含む鉄観音たちの運命は私にかかっているっ! ←ちょっと大げさ?(笑笑)
引き続きがんばるよーーー!!
東京に来て少し近くなったのだから、帰国したらいつでも遊びにおいでね。
一緒に飲みましょうね~♪
(しばらくは日本にいるのかな?waiatto[←スペルが分からないからローマ字。ごめん!]によろしく。)
投稿者 愛里 : 2005年10月27日 18:42
お久しぶりです。kyokoです。
すごいですね!愛里さん〔←ちょっと変な感じ!)
なんか相変わらずのパワーですね!すごい!
そんな素敵な経験をしてる愛里さんが羨ましい☆
いつまで滞在するんですか?
投稿者 kyoko : 2005年10月27日 16:03
うわぁ~
読んでいるわたしの腕も、鳥肌が立っているみたいにチリチリしてきました!
愛里さん、すごいです(ことばが足りなくて、ごめんなさい)!!
投稿者 smash : 2005年10月26日 21:55